第1回「写経会」
特集
2018.11.12

第1回「写経会」

写経とは、お釈迦さまの心や教えである「お経」を書き写すことを言います。かつて、数少ない貴重な経典を学んだり、伝えたりする方法のひとつとしてお坊さんがお経を書き写したことに始まったという説もありますが、「写す」は「移す」に通じ、自身の身や心の中にお釈迦さまの心や教えを転移する大切な修行のひとつともされ現代に続いています。

「人生は思い通りにならない。それは、世の中の全ては移り変わり、多くの繋がりの中で変化し続けているから」
このことを正しく理解し、捉えることができれば苦しみから解放され、心が安定した状態になると言われ、お釈迦さまは、怒りの全ては自分の心が生み出していると教えています。

実践する場所をつくること

「妙秀寺」の現住職・浅野文俊さんは、このお寺を信仰の実践ができる場所にしていきたいと願ってきました。自身の心と向き合い、お釈迦さまを転移する実践の場として2018(平成30)年9月26日に、初めて「写経会」を開催。その様子を覗きに「妙秀寺」を訪ねました。

「本堂の入り口に小さく貼り出しただけの告知だったにも関わらず、時間になるとぽつりぽつりと何人かの方が訪れてくれてとても嬉しい気持ちになりました。“写経会”というとハードルの高さを感じる方もいるようですが、ここでは手ぶらで立ち寄れる和やかな会にしたいと考えたのです」

住職は、写経会当日の様子をそんな風に話してくれました。


▲妙秀寺の住職・浅野文俊さん

「もっと大きく告知したら良いのに。写経に興味のある方って結構いるものよ?今度は、色々なテーマに沿った法話も聞いてみたい」
「書き写すだけなのに、文字って自分の今の心が表れるわよね。線が太くなってしまったり、ブレてしまったり」
など、参加した方々もこの時間を愛しむかのように過ごしている姿が印象的でした。

2時間ほどの限られた時間の中で、どんなことを願いながら書き写したのか、このお経にはどんな意味があるのか、などを学びました。完成後は、住職の奥さまが用意してくれたお茶やフルーツをいただきながら肩の力を抜いて会話を楽しみました。


▲始める前に、住職がお清めをしてくれました


▲祈りから始まる時間


▲静かな時間が過ぎていきます


▲住職も同じ時を過ごしていました

現代の普通になれるように

「妙秀寺」のような地域にある小さなお寺にできることは限られているのかもしれません。それでも妙秀寺が、少しずつ人と人が繋がる場所になっていることは確かな事実。一文字ずつ丁寧にお経を書き写すこの時間のこの場所には、お釈迦さまの存在を感じたように思います。


▲お経


▲御本尊

「人を呼ぶために楽しいイベントをすることも考えました。でも、まず自分が出来ることとして、信仰を実践できる場所をつくることが優先なのではないかと思ったのです。住職であるからこそできることを小さくても長く続けていけたら良いなと思っています」


▲会話を楽しむ参加者の方々

その昔、日本の暮らしの中に仏教やお寺が普通にあったように、現代においても日常にお寺があり続けたいと願う妙秀寺。これからどんなことがこの場所から発信されていくのか楽しみでなりません。


取材・撮影・文 / 堀内麻実(anlib株式会社)

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