近年、仏教離れの深刻化についてニュースやネット上で話題になることが多々あります。その原因として、地域コミュニティーの衰退や人口減少などが挙げられるようです。お寺の境内で地域の子どもたちが走り回る姿は、山梨という田舎においても減少しているのは紛れも無い事実と言えるでしょう。そんな厳しい時代の中でも、妙秀寺が続けている活動があります。
今回は、仏教を伝える為に住職が挑戦している活動についてお話をお聞きしました。
超宗派僧侶団体・坊主道の活動
日蓮宗や浄土宗、臨済宗、曹洞宗などの宗派を超えて、お寺の在り方や僧侶のあり方について考える山梨の団体「坊主道」。浅野住職は、坊主道発足当時からの主要メンバーで、現在でも精力的に活動を続けています。月に一度開催される会議は、メンバーのお寺を順番に訪れて、お経を読むことからスタートすると言います。
「違う宗派のお経を読むことはもちろん、その宗派の教えや個々のご住職の思いなどを聞く機会は今までありませんでした。自分1人では成し得なかったことや、考えもしなかった視点など、坊主道のメンバーから受ける刺激は私の財産になっています。妙秀寺のことだけではなく、次代に仏教を伝えていきたいと願う私にとって坊主道での活動は大切な時間なのです」(浅野住職)
▲月に一度行う会議の様子
仏教と地域を繋ぐことへの意識を高く持っている坊主道のメンバーは、考案した企画やイベントを広く告知し、発足から数年しか経っていないにも関わらず、テレビやラジオ、WEBメディアからも常に高い評価を受けています。浅野住職は、イベントや企画の運営にも多く携わり、メンバーの中でも重要な位置にいることが伺い知れます。
そして、そんな坊主道のメンバーが数年間かけてたどり着いた想いを形にした建物なき寺院「SOCIAL TEMPLE」も2019(平成31)年よりスタートしました。浅野住職ももちろん主要メンバーの1人。
坊主道のメンバーと一般の人たちを繋ぎ、両者が「共働」することによって生まれる大きな可能性に、今後更に注目が集まることが期待されています。
お寺でご飯を食べよう!「寺GO飯」
孤食の解決や子どもと大人、地域のコミュニティー連携に有効な手段として近年話題になっている「子ども食堂」。そのお寺バージョンとしてスタートしたのが「寺GO飯」です。先に話した坊主道のメンバーが企画したもので、月に一度メンバーのお寺を使って活動をしています。
寺GO飯では、食事の前に参加者全員でお経を読んだり、座禅を体験したり、法話を聞いたりします。寺GO飯実行委員会を中心に、県内の学生ボランティアや地域ボランティア、活動に賛同し食材を支援してくれる人や調理をしてくれる県内レストラン経営スタッフなど、多くの人が携わる中で、浅野住職もボランティアスタッフとしてこの活動に参加しています。
「子どもたちが、学生のお兄ちゃんやお姉ちゃんに宿題を教えてもらう姿も見られます。皆で遊んだり、ご飯を食べたりする時間は、大人である私たちも楽しく嬉しいものですよね。運営も大変ですが、私もできる限りのことを協力し、長く続いていくことを願っています」
そう浅野住職は話します。
▲食事の前には、法話や座禅などの時間があります
子どもと大人が同じ時間を共有することで、食や遊びから新たな出会いや学びを得ることを目的としているという寺GO飯は、今までに約20回開催されていて、地域に根付きつつあるようです。
どなたでも参加できますので気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
お寺のじかん
https://www.otera-no-jikan.com
▲寺GO飯の活動を続けているメンバー。浅野住職は、上段の右から二番目
「妙秀寺」と地域を繋ぐ時間
広い視野を持ち、様々な活動に参加している浅野住職ですが、その全ては「妙秀寺」があるからこそのことです。浅野住職は、「妙秀寺」が常に新陳代謝を繰り返し、この地域の人々の癒しの場であり、憩いの場であることを誰よりも強く願っているのです。
「自分にできることは挑戦し続けます。もちろん、楽しいことばかりではありませんが、支え支えてもらいながら地域はあるのです。多くは求めず、地域の人々に必要とされるお寺であり続けたいと思っています」
穏やかにそう話す浅野住職は、若い世代にも広くお寺のことを知っていただくためにホームページを開設、地域の人たちの無尽(月に一度、地域の仲間が集まる食事会。)への参加、妙秀寺で開催される写経会などのイベントの企画・運営など、妙秀寺の循環を願った活動はとどまることを知りません。
▲無尽で積み立てたお金で地域の方々と旅行に行くこともあります
▲ホームページを開設するにあたり、勉強も重ねてきました
▲ホームページに掲載用の写真撮影の様子
▲不定期で開催される妙秀寺「写経会」の様子
「地域を繋げることがより豊かな暮らしを実現できると信じています。予定よりも早いスピードで高齢化が進んでいると言われているここ山梨で、仏様に近い距離にいる私たちだからこそできることがあると感じています。その為に、まずは私が地域と繋がっていくことが重要です」
浅野住職は、山梨のこれからを見据えた上で、今の自分の活動があることを力強く語ってくれました。そして、今後も地域の中に当たり前のように存在するお寺「妙秀寺」を目指し様々な活動を続けていくことでしょう。
▲いつも穏やかな浅野住職
取材・文/堀内麻実(anlib株式会社)